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回転運動する負荷トルクの計算例④

(水平)回転運動するワークのイナーシャを考慮したモーター負荷トルク計算の計算例を紹介します。

(モーターギヤ:ワークギヤ=1:3の場合=ギヤ比が異なる場合の計算例)

​但し、ワーク形状が下図のように少し複雑な形状をしているものとします。

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ちょっと複雑な形状をしたワーク

【考え方】

基本的な考え方は、同じですが、ワーク形状のイナーシャの求め方が、若干異なってきます。

このような少し複雑な形状は、単純な形状に分解して、それぞれのイナーシャを求めていきます。

分解後の形状は、下記のようになります。

【イナーシャJ=MxK2 K2の代表例(式)】のページにて紹介している代表的な式にあてはまるように分解していきます。 

 

 

 

 

 

 

ここで、問題です。

Q① 上図のよう分解したワーク形状が、

 

    ①(青色)部:質量200g、回転外半径(r1)2cm、回転内半径(r2)1cm

    ②(ピンク色)部:質量20g、回転半径(R)3cm 形状半径(r1)0.5cm

    ③(緑色)部:質量150g、回転半径(r1)4cm

    ④(オレンジ色)部:質量100g 縦2cmx横1.5cm (aは1cm、bは0.75cm)

 

   のワークが(水平)回転運動する時に発生するモーター負荷トルクを求めましょう。

   但し、モータギヤとワークギヤのギヤ比は同じ(=1:3)とし、モータギヤ質量50g、回転半径は1.5cm、ワークギヤ質量

   100g、回転半径4.5cmとします。

   また、摺動抵抗はモーターギヤの回転半径1.5cmの箇所で20gとします。

   駆動波形のt1=t3は0.3s、t2は0.1sとし、その時のモーターはθ=270°回転とします。

Q② Q①で求めた負荷トルクに対して、安全率S=2を確保出来るモーターの最大トルクを求めましょう。

モーター負荷トルクはそれぞれの負荷トルクの総和で求められますが、ギヤ比が異なる場合、ワークの負荷トルク計算時

おけるイナーシャの計算が異なってきます。

モーター側とワーク側のギヤ比が異なる場合、ワーク側の負荷トルクはモーター軸負荷トルクに換算する場合、ギヤ比の

2乗に比例します。

    T(ワーク)=〔Ix(モーターギヤ/ワークギヤ)^2〕xω’

             (モーターギヤ/ワークギヤ)の2乗

※補足

負荷トルクの基本はT=Ixω'です。このイナーシャIにギヤ比の2乗を掛けたものが、モータ軸換算された負荷トルクなり

ます。

 

A① モーター負荷トルクはそれぞれの負荷トルクの総和で求められます。 

    負荷トルク(T)=加速トルク(Iω’)+ 外的負荷トルク より、

     T =I x ギヤ比の2乗xω'  +   I x ギヤ比の2乗xω'    +    Im x ω'       +  摺動抵抗  〔g・cm〕

             (↑ワークの加速トルク)           (↑ワークギヤの加速トルク)                  (↑モータギヤの加速トルク)     (外的負荷トルク)

                                                                      (※モータギヤはモータに直結しているのでギヤ比の影響はなし)

まず、【ワークの加速トルク(T)】を求めるのですが、イナーシャの計算を分解した①~④のパーツごとに計算していきます。

    T(ワーク)=〔Ix(モーターギヤ/ワークギヤ)^2〕xω’

              (モーターギヤ/ワークギヤ)の2乗

                    I=(GD2/4)/g=J/g 〔gf・cm・s2〕

 

 

■①(青色)部:質量200g、回転外半径(r1)2cm、回転内半径(r2)1cm

    

  I(①部)=J/g=(MxK^2)/980  ここで、K^2=(r1^2+r2^2)/2

                       (Kの2乗=(r1の2乗+r2の2乗)/2)

  より、

  I(①部)=〔(200x(2x2+1x1)/2)x(1/3)x(1/3)〕/980=0.06 (gf・cm・s2)      

                                                                                         I(①部):0.06 (gf・cm・s2)

 

 

 

■②(ピンク色)部:質量20g、回転半径(R)3cm 形状半径(r1)0.5cm

  

  I(②部)=J/g=(MxK^2)/980  ここで、K2=(r1^2/2)+R^2

                       (Kの2乗=(r1の2乗/2)+Rの2乗)

  より、

  I(②部)=〔20x((0.5x0.5/2)+3x3)x(1/3)x(1/3)〕/980=0.02 (gf・cm・s2)     

  ここで、このパーツは2個あるので、0.02x2=0.04           I(②部):0.04 (gf・cm・s2)

 

 

 

■③(緑色)部:質量150g、回転半径(r1)4cm

 

  I(③部)=J/g=(MxK^2)/980  ここで、K^2=r1^2/2

                       (Kの2乗=(r1の2乗/2))

  より、

  I(③部)=〔150x(4x4/2)x(1/3)x(1/3)〕/980=0.14 (gf・cm・s2)        

                                                                                        I(③部):0.14 (gf・cm・s2)

 

■④(オレンジ色)部:質量100g 縦2cmx横1.5cm (aは1cm、bは0.75cm)

    

  I(④部)=J/g=(MxK^2)/980  ここで、K^2=(a^2+b^2)/3

                       (Kの2乗=(aの2乗+bの2乗)/3))

  より、

  I(④部)=〔100x(1x1+0.75x0.75)/3)〕x(1/3)x(1/3)/980=0.01 (gf・cm・s2) 

                                                                                             I(④部):0.01 (gf・cm・s2)

 

従って、ワーク(全体)のイナーシャは、①~④で求めたイナーシャそれぞれの総和となるので、

  I(ワーク(全体))=I①+I②+I③+I④

            =0.06+0.04+0.14+0.01=0.25                 I(ワーク(全体)):0.25 (gf・cm・s2)

 

同様に、ワークギヤとモータギヤのイナーシャを求めます。

■ワークギヤ部:質量100g、回転半径4.5cm

    

  I(ワークギヤ部)=J/g=(MxK^2)/980  ここで、K^2=r1^2/2

                       (Kの2乗=(r1の2乗/2))

  より、

  I(ワークギヤ部)=〔100x(4.5x4.5/2)x(1/3)x(1/3)〕/980=0.11 (gf・cm・s2)   

                                        I(ワークギヤ部):0.11 (gf・cm・s2)

 

■モーターギヤ部:質量50g、回転半径1.5cm

  I(モーターギヤ部)=J/g=(MxK^2)/980  ここで、K^2=r1^2/2

                       (Kの2乗=(r1の2乗/2))

  より、

  I(モーターギヤ部)=〔50x(1.5x1.5/2)〕/980=0.06 (gf・cm・s2)   I(モータギヤ部):0.06 (gf・cm・s2)

  (※モータギヤはモータに直結しているのでギヤ比の影響はなし(ギヤ比は1)

次に、【ワークの角加速度(ω’)】を求めましょう。

 

    ω'(ワーク)=ω/t1 〔rad/s2〕で求められますので、まずはω(角速度)を求めます。

〔Ix(モーターギヤ/ワークギヤ)^2〕xω’

    (モーターギヤ/ワークギヤ)の2乗

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まずはω(角速度)を求めます。

詳しい求め方は、【回転運動する負荷トルクの計算例①】を参照

して下さい。

 (t1+t2)xω=θπ/180 〔rad/s〕より、

 (0.3+0.1)xω=270xπ/180        ω=3.75π 〔rad/s〕

 

 よって、

 ω'=ω/t1 〔rad/s2〕より、

 ω'=3.75π/0.3=12.5π 〔rad/s2〕   ω'=12.5π 〔rad/s2

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以上のことから、【ワークの加速トルク】が求められます。

      T(ワーク(全体))=Ixω’=0.25x12.5π=9.81 〔g・cm〕      T(ワーク)=9.81 〔g.cm〕

以下同様に

【ワークギヤT(ワークギヤ)、モーターギヤT(モーターギヤ)の加速トルク】を求めます。

   T(ワークギヤ)=Ixω’

          =0.11x12.5π=4.32 〔g・cm〕             T(ワークギヤ)=4.32 〔g・cm〕  

                        

   T(モータギヤ)=Ixω’

          =0.06x12.5π=2.36 〔g・cm〕             T(モータギヤ)=2.36 〔g・cm〕

従って、求める【モーター負荷トルク】は、

 

   T=Ixω'    +  Ixω'     + Ixω'    +  摺動抵抗  〔g・cm〕

      (↑ワーク)   (↑ワークギヤ)  (↑モータギヤ)

   より、 

 

    T=9.81+4.32+2.36+(20x(1/1.5))=29.82          T(モーター負荷)=29.82 〔g・cm〕

 

 

 

 

A② 安全率S=(モータートルク)/(負荷トルク) にて求められます。

    

    よって、安全率S=2を確保できるモーターの最大トルクは、

 

     29.82x2=59.64           T(必要なモーターの最大トルク)=59.64 〔g・cm〕                        

    【補足】実際のモーター選定の際は、モーターの許容イナーシャと負荷イナーシャ

         の関係を考慮(ステッピングモーターならばイナーシャ比10倍以下)する

         必要があります。

 

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【メモ】

摺動抵抗は、モーター軸換算(g・cm)するため、その比(=1/1.5)を掛けます。

 

​【回転運動する負荷トルクの計算例③】の例題と比較してもわかるように、

ギヤ比が1:1の場合、ワークの加速トルクだけで、負荷の81%を占めていました

が、ギヤ比が1:3の場合、ワークの加速トルクに占める割合は、55%まで減少し、

負荷トルク全体では、およそ1/3になったことが分かります。

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