設計者のための設計手帳
製品設計者のための基礎技術情報サイト
駆動制御に必要な基礎知識
ここでは、モーターで駆動制御を行う際(またはモーターを選定する際)、なぜイナーシャの計算が必要なのか?の概要を説明
します。
また、ステッピングモーターを制御する上で必要なパルス数、時間、速さなどを計算例にて説明します。
●モーターで駆動制御を行う際(またはモーターを選定する際)、なぜイナーシャの計算が必要ななのか?
イナーシャ(慣性モーメント)は、起動時や減速時に発生する加速(減速)トルクに影響を及ぼし、イナーシャが大きくなると、
それに比例して加速(減速)トルクも大きくなります。
駆動制御を行う際(またはモーターを選定する際)、以下の注意が必要になります。
【ACモーターの場合】
ACモーターの場合、モーターのギヤヘッドの許容イナーシャ(許容慣性モーメント)が、負荷イナーシャ(負荷慣性モーメント)
を上回る必要があります。負荷イナーシャの方が大きい場合、モーターのギヤヘッド破損につながるためです。
【ステッピングモーターの場合】
ステッピングモーターは、モーターのローターイナーシャ(ローター慣性モーメント)に対する負荷イナーシャ(負荷慣性モーメ
ント)の比を、「イナーシャ比=負荷イナーシャ÷ローターイナーシャ」で求め、イナーシャ比が10倍以下になるようにします。
ステッピングモーターの場合、加減速トルクに余裕があっても、イナーシャ比が大き過ぎると、加速指令についていけず脱調
する場合があるためです。
【サーボモーターの場合】
モーターの許容イナーシャ(許容慣性モーメント)が負荷イナーシャ(負荷慣性モーメント)を上回るようにします。
許容イナーシャより負荷イナーシャが大きいと、うまく制御できず動作が不安定となります。
●次に、ステッピングモーターを制御する上で必要なパルス数、時間、速さなどを計算例にて説明します。
【第1問:必要なパルス数は何pls?】
①基本ステップ角度 2.5°のステッピングモーターがあります。
1回転(360°)するためには何パルス発信する必要があるでしょう?
基本ステップ角度とは1パルスあたりのステップ角度なので、1パルスあたり2.5°回転することになります。
よって、
360〔°〕/2.5〔°〕=144〔パルス〕 答え)144〔pls〕
【補足】基本ステップ角度2.5°x144〔パルス〕=360〔°〕
【第2問:回転する所要時間は何s?】
②基本ステップ角度1.25°で周波数250ppsの時、90°回転する所要時間は?
まず90°回転するためのパルス数を求めます。
90〔°〕/1.25〔°〕=72〔パルス〕(=72〔pls〕)
【補足】基本ステップ角度1.25°x72〔パルス〕=90〔°〕
ここで、ppsとは1〔s〕間に発信するパルス数のことを言います。
つまり250ppsとは1〔s〕間に250パルス発信すると言う意味です。
よって、
72〔pls〕/250〔pps〕=0.288〔s〕 答え)0.288〔s〕
【第3問:回転する速度は何r/min?】
③上記②の条件で周波数500ppsの時のモーター速度〔r/min〕は?
モーター速度〔r/min〕(=rpm)は1分間に何回転するのか?と言うことです。
まず、1パルスあたり何回転するのか求めます。基本ステップ角度は1.25°ですので、
1.25〔°〕/360〔°〕=0.00347〔回転〕
1パルスあたり0.00347回転することがわかったので次に1分間に何パルス発信するのか求めます。
500〔パルス〕x60(s)=30000〔パルス〕
よって、
0.00347〔回転〕x30000〔パルス〕=104.17〔r/min〕(=rpm)
となります。 答え)104.17〔r/min〕(=rpm)

point

point

point


