設計者のための設計手帳
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バネの基礎概要
製品設計においてバネは欠かすことの出来ない機械要素の1つです。
圧縮バネ、引っ張りバネ、ねじりバネなど、実際に製品設計に携わる設計者にとっては避けて通れないもので、バネ設計は
重要な設計技術の1つです。
しかしながら、日々時間に追われながら製品設計に従事している設計者にとって、バネ設計は意外とやっかいなものです。
現実はバネ設計だけで時間を費やすわけにはいかないでしょうし、バネ特有のノウハウはそれぞれのバネ屋さんが持っているため、実際の設計においては、バネ設計は諸条件を提示してバネ屋さんに検討(お任せ)してもらうのが、一般的な方法だと言えるでしょう。
とは言え、バネの基礎概要程度は抑えておきたい知識です。
ここでは特に圧縮バネを使用する際の製品設計上の留意点とバネの基礎概要を元にバネ計算の際、どこをどういじめれば
効くのか、などを紹介します。
【圧縮バネを使用する際の製品設計上の留意点】
①初期たわみ無しでの使用
初期たわみがない状態、つまり自由長さ状態での初期設置
や隙間がある状態での設置は 上下に衝撃が加わり座屈
や胴曲がりが発生しバネ寿命に影響を与えます。
初期たわみをとった状態で設置するとバネの上下面が安定
します。
②圧縮バネのガイド無しでの使用
圧縮バネはガイド無しで使用するとバネの座屈や胴曲がりが発生して、曲がりの内側に局部的な高応力がかかります。
これによりバネが破損などする場合があるのでシャフトやザグリなどのバネガイドを必ず設けるようにしましょう。
③シャフトを設計する際の留意点
バネ内径とシャフトのクリアランスが小さいとバネとシャフトがこすれバネ破損の原因になります。
また、シャフトとのクリアランスが大きすぎるとバネ座屈の原因になります。
●下の左図のようにシャフトを設計する際の目安はバネ内径より1mm程度シャフト径を細くするようにしましょう。
●自由長さの長い圧縮バネ(自由長さがバネ外径の4倍以上)は下図の右図のようにシャフトに段差をつけて、バネ胴曲
がりの内径とシャフトとの接触を避けるようにしましょう。
●シャフト長さが短い場合、バネが座屈した際にシャフトとのこすれによる破損が発生する可能性があります。
シャフト長さはバネの初期設定長さの1/2以上の長さにするようにしましょう。
また、C3程度の面取りを施すようにしましょう。


④ザグリを設計する際の留意点
ザグリ穴とのクリアランスが小さいとバネがたわんだ際、外側に膨らんだバネが拘束されて応力集中によってバネが
破損する場合があります。
●下の左図のようにザグリ穴径をバネ外径よりも+1.5mm程度になるようにしましょう。
●自由長さの長い圧縮バネ(自由長さがバネ外径の4倍以上)は下の右図のようにするのが理想的と言えるでしょう。

【バネ設計をする際のポイント】
●バネ定数の計算式
K=(P-Pi)/δ=G x (d^4/8) x N x D^3 単位:(N/mm)または(Kgf/mm)
(dの4乗/8) (Dの3乗)
但し、
K:バネ定数 単位:(N/mm)または(Kgf/mm)
P:バネにかかる荷重 単位:(N)または(Kgf)
Pi:初張力 単位:(N)または(Kgf)
δ:たわみ 単位:(mm)
G:横弾性係数 単位:(N/mm^2)または(Kgf/mm^2)
【補足】______________________________
ばね鋼鋼材 78x103
硬鋼線 78x103
ピアノ線 78x103
オイルテンパー線 69x103
ステンレス鋼線 74x103 単位:(N/mm^2)または(Kgf/mm^2)
_________________________________
d:線径 単位:(mm)
N:有効巻数
D:平均径 (=<バネ内径D1+バネ外径D2>/2) 単位:(mm)
【point!】________________________
Q.バネ定数を小さくするにはどこをいじめれば有効?
A.線径dを小さくするのが有効 (計算式より4乗で効いてくるため)
___________________________
●ねじり応力の計算式
τ0=8*D*P/π*d3 単位:(N/mm^2)または(Kgf/mm^2)
但し、
D:平均径 (=<バネ内径D1+バネ外径D2>/2) 単位:(mm)
P:バネにかかる荷重 単位:(N)または(Kgf)
d:線径 単位:(mm)
【point!】_________________________
Q.ねじり応力を小さくするにはどこをいじめれば有効?
A.線径dを大きくするのが有効 (計算式より3乗で効いてくるため)
____________________________
●バネの平均径Dの4.5倍以上の自由高さになるとバネが座屈してしまので注意しましょう。
●バネの自由高さと密着高さの差は自由高さの80%以内に抑えるようにしましょう。
(↑これは計算式が成り立たなくなるためです。)
●バネ計算寿命が1000万回を超える場合、半永久的な寿命になると考えて良いでしょう。
●許容ねじり応力>荷重時のねじり応力が80%以内におさえるようにしましょう。


